膠原病の治療:副作用で大事な2つのポイント
- 膠原病の治療における副作用で知っておきたいポイントがわかる!

今回は、膠原病の治療編ということで、副作用で大事な2つのポイントについて詳しく解説していきたいと思います!

はじめに

膠原病は、あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、自己免疫疾患の一つで、自分の免疫細胞が異常に活性化して自分自身を攻撃してしまうという病気です。
まず、膠原病について詳しく知りたい、もしくは治療はどういったものがあるのか知りたいという方は、こちらの記事をご参考ください
膠原病の治療薬の副作用の大事なポイント

膠原病の治療薬の副作用を考える上で、大事なポイントが2つあります。
- 一つ目は、免疫力低下によって感染症にかかりやすくなるという『易感染性』に気をつけること
- 二つ目は、 治療薬それぞれに、特徴的な副作用があるということ
です。
今回は、この2つのポイントについてそれぞれ詳しくお話ししていきます。
ポイント❶ 易感染性

まず、一つ目のポイントである『易感染性』です。
易感染性は、ステロイドにも、免疫抑制薬にも、生物学的製剤にも当てはまります。
膠原病とは、自分の免疫が異常に活性化することで発症すると言いましたが、治療には、この異常な免疫を抑えるため、免疫力を落とす治療を行います。
そのため、治療によって免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなってしまいます。

この感染症にかかりやすくなることを『易感染性』といいます。
ある研究では、ステロイドであるプレドニゾロンを1日20mg以上を使用すると、対照群と比べて感染症の発症が2倍になると報告されています1)。
どんな感染症に気をつけなければいけませんか?

易感染性を考える上で特に注意が必要なものは、『日和見感染症』です。
日和見感染症とは、健康な人では通常罹らない弱毒菌による感染症のことをいいます。
日和見感染症を起こす菌は、ちょっと聞きなれないものも多いかもしれませんが、こちらのような菌があります
- メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)や緑膿菌、クレブシエラなどのグラム陰性桿菌といった細菌や結核菌等の細菌

- アスペルギルスやニューモシスチスといった真菌

- ヘルペスウイルスやサイトメガロウイルスといったウイルス

ステロイドや免疫抑制剤の使用によって、これらの感染症にかかり易くしてしまいます。
これらは、一旦罹患すると重症化することもあるため、発症には充分気をつけなければいけませんし、もし発症した場合は、早急に治療する必要があります。

ダイフェン®︎・バクタ®︎(ST合剤)について

ステロイドを処方された時に、ダイフェン®︎という予防の抗菌薬を処方されましたが、あれは何の菌を予防するのですか?

ダイフェンやバクタと呼ばれるST合剤という抗菌薬は、膠原病などの自己免疫疾患が発症した時の中等量から高用量のステロイドを開始した時に、よく一緒に処方されます。
このST合剤は、主に日和見感染症の一つであるニューモシスチス肺炎を予防するために使用されます。

ではなぜ、ニューモシスチス肺炎を予防する必要があるのかというと、
進行した肺炎で診断されると、治療の効果が乏しく、最悪致死的になってしまう可能性があるためです。
ニューモシスチス肺炎は、発症の初期では、軽い咳があるくらいのことが多く、病気の進行が気付きにくいのです。

病院を受診した時には、肺炎がかなり進行していたという場合も多く、
肺炎が進行して、治療の手遅れにならないように、予め予防の抗菌薬を飲んでおくということが大切なのですね。

日和見感染症を予防するために気をつけたいこと

日和見感染症を予防するために何か気をつけることはありますか?

ステロイドや免疫抑制薬を服用している方の日和見感染症を予防するために心がけて欲しいことを3つご紹介します。

❶ まず1つ目は、普段から自分の体調の変化について気にしておくことが大切です。
具体的には、あれちょっと熱っぽいなと思ったらこまめに検温をしたり、
喉の痛みや、咳が出る、だるさが強いなど身体の変化をこまめにチェックしておくことです。

❷ 二つ目は、こういった感染症にならないために、免疫力を落とさない生活を心がけるということです。
具体的には、ストレスを溜めない生活や十分な睡眠時間をとること、
また、栄養のバランスに気をつけながら、ジャンクフード中心の偏った食事をしないなどを心がけます。
ただ、神経質になりすぎるのも免疫力を落としてしまうので、たまには、甘いものを食べたりといったことも大切です。

❸ 最後に大事なのが、身体の不調に気づいたら、すぐに医療機関を受診することです。
免疫抑制薬を使用中の方は、感染症にかかりやすいだけでなく、重症化するリスクも高いです。
なので、治療を遅らせないために、身体の不調に気づいたら早めの受診を検討してください。

ポイント❷ 免疫抑制薬の副作用について

次に、免疫抑制薬の副作用についてやっていきます。
膠原病の治療編でもお話しましたが、膠原病の治療薬には、主に
- ステロイド
- 免疫抑制薬
- 生物学的製剤
- 免疫調節薬
の4つがありました。
今回は全て説明すると長くなってしまうので、免疫抑制薬における特徴的な副作用を紹介していきますね。

なんでそれぞれの副作用について知っておいた方が良いんですか?

まなみさんの言うことは、とても重要なことで、
今回の免疫抑制薬に限らず、お薬を飲んだ時に、その薬で出やすい副作用というものを知っていれば、もし沢山薬を飲んで何か副作用がでたとしても、このお薬によるものかなと、予想をする事ができます。

そのため、予め薬の副作用を知っていれば、その薬剤を中止すれば他の薬を飲んでいたとしても、他の薬まで辞めることはないんですね。
前回にもお話ししましたが、膠原病で主に使用される免疫抑制薬には、
- メトトレキサート(リウマトレックス®︎)
- タクロリムス(プログラフ®︎)
- シクロスポリン(ネオーラル®︎)
- アザチオプリン(イムラン®︎・アザニン®︎)
- シクロフォスファミド(エンドキサン®︎)
- ミコフェノール酸モフェチル(セルセプト®︎)
があるとお話ししました。
今回は、覚えておいてほしい代表的な副作用についてお話ししていきますね。

メトトレキサート(リウマトレックス®︎)

まず、メトトレキサート(リウマトレックス®︎)についてです。
メトトレキサートは、『 関節リウマチや皮膚疾患である尋常性乾癬 』で主に使用されます。また多発性筋炎・皮膚筋炎、全身性エリテマトーデスといった膠原病などでも使用されることがあります。
メトトレキサートで特徴的な副作用は、
- 口内炎、嘔気・嘔吐といった消化器症状
- ASTやALTの上昇を伴う肝障害
- 貧血や白血球減少などを起こす骨髄抑制

があります。
メトトレキサートによる口内炎、嘔気・嘔吐などの消化器症状がありますが、
この消化器症状は、メトトレキサートを1回投与から2回に分割して内服したり、またフォリアミン®︎という葉酸製剤を、通常メトトレキサートを飲んだ翌々日に内服することで、消化器症状を和らげることができます。
また、このフォリアミン®︎は、肝障害などの副作用も軽減する効果もあります。

貧血は、メトトレキサートによる葉酸欠乏からくるもので、葉酸欠乏は、巨赤芽球性貧血という貧血を起こします。
巨赤芽球性貧血は、血液検査で、貧血の指標であるHb(ヘモグロビン)が低下するとともに、赤血球の大きさを表すMCVという項目が上昇する貧血です。
特に、このMCVが105以上の時に注意してください。
タクロリムス(プログラフ®︎)、シクロスポリン(ネオーラル®︎)

次に、タクロリムス(プログラフ®︎)とシクロスポリン(ネオーラル®︎)についてです。
タクロリムスとシクロスポリンは、どちらもカルシニューリン阻害薬という種類の免疫抑制薬です。
タクロリムスはリウマチ、SLE(全身性エリテマトーデス)や多発性筋炎・皮膚筋炎、潰瘍性大腸炎で使用されます。
シクロスポリンは、ベーチェット病、皮膚疾患である尋常性乾癬、アトピー性皮膚炎などで主に使用され、SLEや筋炎といった膠原病などでも使用されることがあります。
カルシニューリン阻害薬の副作用は、カルシニューリン阻害薬に特徴的なものと、それぞれに特徴的なもので分けて考えます。
カルシニューリン阻害薬で特徴的な副作用
まず、カルシニューリン阻害薬で特徴的なものをみてみましょう。
カルシニューリン阻害薬で特徴的なものは、
- 急性・慢性腎障害
- 高カリウム血症
- 高血糖・糖尿病

があります。
以上の副作用は、カルシニューリン阻害薬では、比較的有名なので、覚えておいてみてくださね。

では、それぞれで特徴的な副作用は何があるでしょうか。
タクロリムスで特徴的な副作用
タクロリムス(プログラフ®︎)で特徴的な副作用は、
- 振戦(ふるえ)
- 消化器症状(吐き気、下痢など)

があります。
シクロスポリンで特徴的な副作用
一方で、シクロスポリン(ネオーラル®︎)で特徴的な副作用は、
- 体毛が増える(多毛)
- 歯肉が厚くなる
- 高尿酸血症
- 低マグネシウム血症

があります。
アザチオプリン(イムラン®︎/アザニン®︎)

続いて、アザチオプリン(イムラン®︎/アザニン®︎)についてです。
アザチオプリンは、主にSLE(全身性エリテマトーデス)や、多発性筋炎・皮膚筋炎、血管炎といった多くの膠原病で使用される免疫抑制薬です。
アザチオプリンで注意したい副作用は、
- 嘔気、下痢などの消化器症状
- ASTやALT、γGTP、ALPの上昇を伴う肝障害
- 血球減少

です。
また、アザチオプリン(イムラン®︎/アザニン®︎)には、ごく稀ではありますが急性白血球減少と全脱毛といった重篤な副作用を起こすことがあります。
この副作用の発症は『NUDT15遺伝子多型』と関連する事が明らかとなっており、
こういった重篤な副作用を起こさないために、通常アザチオプリンの開始前に採血で『NUDT15遺伝子』を調べています。
こちらの表をご覧ください

遺伝子結果が『Cys/Cys』であった場合、急性白血球減少と全脱毛のリスクが非常に高いため、投与を中止します。
「Arg/Cys」「His/Cys」の場合は、低用量から使用開始します。
「Arg/Arg」「Arg/His」の場合は、リスクは低いため、通常量から投与開始します。
ちょっと複雑ですが、アザチオプリンの開始前から、重篤な副作用が出やすい方かを見分けています。

シクロフォスファミド(エンドキサン®︎)

続いて、シクロフォスファミド(エンドキサン®︎)についてです。
シクロフォスファミドは主にSLE(全身性エリテマトーデス)や、多発性筋炎・皮膚筋炎、血管炎といった多くの膠原病で使用される免疫抑制薬です。
シクロフォスファミドの副作用は、短期的に出現するものと長期的に出現するものに分けて考えます。

短期的に問題となる副作用
まず、短期的に問題となる副作用は、
- 嘔気・嘔吐
- 出血性膀胱炎
- 血球減少

があります。
嘔気・嘔吐
シクロフォスファミド(エンドキサン®︎)は、抗がん剤の一種でもあり、嘔気・嘔吐の副作用があります。
頻度は、5〜15%です。症状が強い場合は、吐き気止めを併用します。
出血性膀胱炎
また、出血性膀胱炎もシクロフォスファミドに特徴的な副作用の一つで、累積投与量が多かったり、シクロフォスファミドの経口薬を連日投与する場合に認めることがあります。
頻度は、1〜5%です。
予防のために、十分な飲水や点滴(1.5〜3L)を行い、メスナ®︎(ウロミテキサン)という予防薬を使用する場合もあります。

血球減少
血球減少(白血球、血小板など)については、シクロフォスファミドの開始後2週間前後で認めることが多いです。
頻度は高く、5〜45%と言われております。実感としても、比較的高確率で出る印象です。
通常は、経過によって少しづつ改善してくるので、重度の血球減少がないかや感染症の発症がないかに注意しながら経過観察していきます。
白血球が減少した時に、感染症を併発した場合は、抗生剤の他に、「G-CSF」という好中球を増やす注射を使う場合もあります。
また、白血球の減少時に、シクロフォスファミドによる免疫抑制効果と相まって、感染症のリスクも増えるので、投与後2週間前後の時期は、特に感染症には注意が必要です。
長期的に問題となる副作用
一方で、長期的に問題となる副作用は、
- 性腺機能低下

があります。
無月経や精子減少症、卵巣機能低下を起こし不妊の原因となる場合があります。
卵巣機能低下については年齢が高く、累積投与量が多いほどリスクが高くなります。
頻度は、1〜7%と高いわけではないですが、生殖可能年齢の患者さんについては、使用には慎重に判断することになります。

ミコフェノール酸モフェチル(セルセプト®︎)

では、最後にミコフェノール酸モフェチル(セルセプト®︎)についてです。
ミコフェノール酸モフェチルは、
- SLE(全身性エリテマトーデス)のループス腎炎
で主に使用されます。
ミコフェノール酸モフェチル(セルセプト®︎)で注意したい副作用は、
- 下痢
- 血球減少

です。
ミコフェノール酸モフェチルで、特徴的な副作用は、なんといっても『 下痢 』です。
開始する時は、比較的少量から開始して、下痢やその他の消化器症状がないかをみながら、徐々に増量していきます。
下痢が強い場合は、ロペラミド(ロペミン®︎)という止痢薬を併用したり、どうしても症状が強い場合はミコフェノール酸モフェチルを減量・中止する事もあります。

今回の動画はこちら
今回の内容を動画で学びたい時はこちらをご覧ください⬇︎
今回も、最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、また別の記事でお会いしましょう!

お知らせ

現役医師が作ったヘルスケアプリ『 マイカル 』2025年7月リリース!!
iPhone版のURLとQRコード👇
https://apps.apple.com/jp/app/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%AB%E3%83%AB/id6748717829

Android版のURLとQRコード👇
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.mycal.medlife





MedLifeチャンネル 〜役立つ医療情報を動画で紹介〜
※個人個人で症状の違いがあるため、詳細な治療などにつきましては直接医療機関へお問い合わせください。



